役割を生きる
一年間に亘る伝統的な呼吸法指導者養成講座を、間もなく終える。
アーサナヨーガを始めた当初から、本当はインドに行って、学びたかったこの伝統的な呼吸法。でも、その頃の私は、娘、母親、嫁、義理の娘という4役を担い、とてもじゃないけど、その役割を放り投げて行ける状態ではなく、そのまま年月だけが通り過ぎた。
夫の両親と同居の中、40代に入って間もなく夫は単身赴任。中高生の多感な時期の息子達を抱え奮闘する中、実家の母が脳溢血で全身不随。父は、どこまでも愛情深く母を介護した。私は。。。誰よりも父親が大好きで、自身が尊敬する最愛の人だった。そんな父親を守る為に、また、まだ70歳代の母を生かす為に、私も全身全霊で母の介護をした。
当時はまだ、車いすで買い物などしていたらジロジロと珍しがられる時代。介護制度も整っておらず、自宅介護は周囲を疲弊させていった。しかも、その時期、私はフルタイムの仕事までしていた。
当時、年代的には、ちょうど更年期。身体の不調、精神の不調は最高潮。鬱症状であることは判っていたが、薬は飲みたくなかった。そんな中、選んだのがたまたまアーサナヨーガ。
適度な運動量でストレッチをして、身体と精神がほぐれる後、最後のシャバアーサナ。この時に、いつもとても不思議なリラックスを感じた。役割から解放された自分自身がそこに横たわっているだけなのに、何とも言い難い安らぎを感じ、この瞬間を味わう為に、超多忙の中を、アーサナヨーガと共に駆け抜けた。
感覚器官を通して味わう喜び。
例えば舌の喜び。 美味しいものを頂いた時。
目の喜び。 美しいものを見た時。
耳の喜び。 美しい音楽を聴いた時。
どれもこれも、素晴らしいが、いつも自分より外にあるものを探し求め、何か、付け足さなきゃならない。そして、その喜びは、来ては去る。でも、ヨーガは違った。
それは、私一人で、完結する喜びだった。
一畳分のマットの上で、呼吸に集中しながら身体を動かす。そして、最後にそのマットの上で、体を横たえるシャバアーサナ。そこで、味わう至福。時に、閉じた目の中に、紫色や黄色や赤色の光が溢れた。これは、一体何なんだ...ただものじゃない。
メディアから聞こえてくる情報では、どうやらインドが発祥とか。。。知らなきゃいけない、知りたい・・・そう思った。
そして、自身の身体や精神に起こる前向きな変化だけを頼りに、子育て、介護、仕事に奮闘しながらアーサナヨーガをする中で、何の迷いもなく、ヴェーダ・ヴェーダーンタの聖典と出会っていった。
そのヴェーダーンタの聖典には、感覚器官を通して得られる喜びとは、全く逆方向の内なる自分自身へのアプローチで得られる心の平安について、とてもロジカルに緻密に書かれていた。
一般的に広まったヨガの背景。それは、インドのヴェーダの文化の中に根付くものであり、ただのエクササイズではなく、生き方そのものであることを学んだ。それは、自身の内側を知っていくことで、いつでも自身の内側にあり、そこにこそ、永遠の平安があるという事。それは、「何が何たるかを知る」それだけで叶う、内側のシャンティ。
ヨーガがただものでないことは、明確に腑に落ちていった。
そして、そんな中で、伝統的な呼吸法を教えてくれるグルとの出会いがあった。
児玉俊彦先生。
そもそも、幼児期からあった過呼吸。当時は、そんな名前もなく、呼吸が苦しいと訴えても「季節の変わり目だからねぇ。」と母に済まされていた。でも、それから、半世紀。いつもではないが、確かにある一定の時期悩まされる。
何気なくしている呼吸が、「苦しい・・」と意識の上にのぼる時、人間は一瞬、死の恐怖を垣間見る。
自身の呼吸を知りたいと常々思っていた。でも、それは、このヨーガを通して伝わるものでないと、意味がないと。。。それは、ヴェーダーンタの聖典を学ぶ中で、見えてきた呼吸の別の側面。
ヴェーダーンタ勉強会、パラヴィッデャー ケンドラム (para-vidya.com)
それは、この生きとし生けるものの中を貫くもの。木々の呼吸が私に与えられ、私の呼吸が木々に与えられていく・・・つまり循環。
「どうか、私の呼吸が、この宇宙の呼吸という営みを乱しませんように」
見事な法則で成り立つこの宇宙や地球の美しさ。
全てを与えられたこの個人という存在の私にできる事、自分が役割として担えることを、ずっとずっと探して生きてきた気がする。そう、つまり生き急いできた気がする。
今 やっとおぼろげに見えてきた自分自身の役割。
必要とする方たちに、出会えますように
自身の持っている知識や力が何かの、誰かの為になりますように。
どこに行かなくても、お金を出さなくても、何かをしなくても
私が私自身に寛ぐ・・・
知りきる道のりは、まだ先であるかもしれないが、確信を持って進む道を見つけた
安堵感。やっと判った、私が生きる意味。
呼吸法の教えを授けてくださるグルに
ヴェーダーンタの教えを授けてくださるグルに 心からナマハ